髙石 昌魚

• 美しき月の雫や宵明星　　　　　　　　　（平1）
• 銀杏の実拾ふ老婆や雨あがり　　　　　　（平4）
• 秋深し信夫文知摺り石模様　　　　　　　（平6）
• 幼子の賀状いびつに文字笑ふ　　　　　　（平7）
• 満開の八重桜背に茣蓙将棋　　　　　　　（平8）
• 開戦の日も凍雲は低かりき　　　　　　　（平9）
• 小さき手と皺手往き交ふ歌留多とり　　　（平10）
• 千年を刻む日の出の淑気かな　　　　　　（平12）
• 枝先に力を潜め春立ちぬ　　　　　　　　（平13）
• 入学式立つ子坐る子横向く子　　　　　　（平14）
• 甚平を着こみ鏡は父の顔　　　　　　　　（平15）
• 子地蔵の頬つつきをり赤蜻蛉　　　　　　（平16）
• 釣り人の背筋伸び切り鮎光る　　　　　　（平17）平成17年度日経俳句会賞受賞句
• 老いの道平になりて日脚伸ぶ　　　　　　（平18）
• 背の赤子手を伸ばしをり蜜柑狩　　　　　（平19）
• ビル谷間四角三角秋の空　　　　　　　　（平20）
• 車椅子押す手も皺の初詣　　　　　　　　（平21）
• 一目みて分かる母の字餅届く　　　　　　（平22）
• 木の芽風原発事故の報届く　　　　　　　（平23）
• 麦秋や美瑛の丘の空青し　　　　　　　　（平25）
• 古障子黄ばみの奥に母の影　　　　　　　（平25）
• 戦なき地球の夢や蜃気楼　　　　　　　　（平26）
• 夏めくや棚田に映ゆる風の影　　　　　　（平26）
• 雑煮食む箸八膳の笑ひ声　　　　　　　　（平27）
• 秒針を見つめる沈黙原爆忌　　　　　　　（平27）
• 諍ひも失せて菜飯の箸二膳　　　　　　　（平28）平成28年度日経俳句会賞受賞句
• 大施餓鬼十一僧の声和して　　　　　　　（平28）
• 薄氷や箔の剥がれし如来像　　　　　　　（平29）
• 残る日々つかずはなれず花筏　　　　　　（平29）
• 一湾の暮れてかすかに鴨の声　　　　　　（平30）
• 端然と坐るが如く独楽回る　　　　　　　（平31）
• 何事もなきめでたさや粥柱　　　　　　　（令２）
• 年甲斐もなきシャツの色竹の春　　　　　（令4）日経俳句会賞受賞