燕雀目シジュウカラ科の留鳥。スズメとほぼ同じ大きさで頭が黒く、背中が灰青色。首から腹の中央までネクタイを締めたように黒い縞がある。頬と腹は白い。なかなかダンディな装いで、日本全国の野山、都会地の公園にもいる。四、五月が繁殖期で、この頃には特に活動が活発になり郊外住宅地にまで出て来て、テレビアンテナなどにとまり、ツッピーツッピーと鳴いている。
同じ科の仲間に小雀(コガラ)、日雀(ヒガラ)、山雀(ヤマガラ)がある。いずれも四十雀よりはもう少し山奥に棲んでいることが多い。ヤマガラは他のカラ類が白い腹部なのに対して、橙色の腹をしている。昔は縁日でヤマガラのお御籤引きというのがあった。お金を口にくわえ、小さなお宮の前にちょんちょんと進むと、賽銭箱にお金を入れてやおら扉を開き、お御籤を一つくわえて戻って来る。うまいもんだなあとすっかり感心して、いつまでも眺めていたことを思い出す。今ではヤマガラを捕ることが禁止されているから、無形文化財とも言うべきこの芸は見られなくなってしまった。五十雀(ゴジュウカラ)というのもいるが、これは四十雀と似てはいても別科の小鳥である。
四十雀をはじめとしたカラ類の小鳥は山林の樹木の洞(樹洞)に巣を作り、樹皮にたかる虫や木の実を食べる。この習性を利用して庭の木に直径四、五センチの小さな穴を開けた巣箱を掛けておくと、四十雀が住み着く。臆病なのに都会地にもよく降りて来る小鳥だが、近ごろのように都会に樹木が少なくなって、四十雀も住宅難となり、こうした人工の樹洞で我慢するようになったのだろうか。
老いの名のありとも知らで四十雀 松尾芭蕉
暫くは四十雀来てなつかしき 高浜虚子
若楓揺りつゝ鳴くは四十雀 水原秋櫻子
四十雀のつれ渡りつゝ鳴きにけり 原石鼎
追ひすがり追ひすがり来て四十雀 石田破郷
山の杉は暗く愚直に四十雀 森澄雄
連れ鳴きの声こぼしをる四十雀 上村占魚
眼を張って雪の上とぶ四十雀 飯田龍太
山晴るる日は呼び合ひて四十雀 中島畦雨
四十雀上げし巣箱に来はじむる 帰山綾子