晩春の季語。花がすっかり散ってしまい、枝にはシベをのぞかせた釣鐘型の萼が残る。やがてそれもばらばらと落ちる。
はなやかな桜花爛漫とは打って変わったうら寂しさを感じる。晩春のうららかで静かな雰囲気の中に、桜蘂降る様子は、すべてを諦め切った安堵感と同時に、昔の盛んなりしころを懐しむといった風情も感じられ、しばしば悔恨の情も催す。
札所ひま桜蘂ふるばかりなり 宮下翠舟 桜蘂降る一生が見えてきて 岡本眸 桜蘂ふるいたはりの声のごと 岡田貞峰