初日(はつひ)、初日の出、初日影、初日拝む  初日は元日の朝日のこと。初日の出、つまり元旦の太陽が水平線や地平線から顔を出すことも意味する。二日や三日がその年、初めて晴れた日でも、初日とは言わない。初日を拝む習慣を古代の太陽信仰に結びつける説もあるが、盛んになったのは明治以降だという。  初日影は朝日やその光のことで、いわゆる「影」を意味するものではない。

菜畠の初日の客となれりけり   杉山杉風
草に木に麦に先づ見る初日かな   小西来山
初日影まず出でたりな生駒山   上島鬼貫
うち晴れて障子も白し初日影   上島鬼貫
雲つつむ初日を空のおしむやは   上島鬼貫
しら粥の茶碗くまなし初日影   内藤丈草
出霞のつつみおほせぬ初日哉   浪化
はづかしの初日射し込む古畳   桜井吏登
喰うて寝て起きて見たれば初日哉   横井也有
竹も起きて音吹きかはす初日哉   加賀千代女
げにも春寝過ごしぬれど初日影   炭太祇
日の光今朝や鰯のかしらより   与謝蕪村
(注)前夜が節分。鬼よけのため、門口に挿した鰯の頭が残っていた。
しづかさの鍬にさし入る初日かな   大島蓼太
隈もなき五尺の庵やはつ日影   高桑闌更
ふるさとの伊勢なを恋し初日影   三浦樗良
我と人と深山ごころや初日影   加藤暁台
我と世をのがれん身にも初日影   加舎白雄
誰(た)が恋ぞ田毎にみつる初日影   松岡青蘿
初日影鶴に餌(え)を飼ふ人は誰   松岡青蘿
(注)餌を飼ふ(う)は、餌をやる。
大空の狭しと匂ふ初日かな   田川鳳朗
土蔵から筋違にさす初日哉   小林一茶
朝雫(しずく)皺手につたふ初日かな   小林一茶
ぬかるみに杖つつ張つて初日かな   小林一茶
初旭(あさひ)鍬も拝まれ給ひけり   小林一茶
葦原やそよりともせず初日かげ   関為山
雪晴の竹の緑に初日かな   湯浅十框
我が国の物とこそ思へ初日影   内藤鳴雪
霜とけて初日にけむる葎かな   村上鬼城
初日さす硯(すずり)の海に波もなし   正岡子規
馳(か)け上る松の小山や初日の出   夏目漱石
出たり出たり海一ぱいの大初日   大町桂月
しずしずと藪にさしこす初日哉   松瀬青々
草の戸の我に溢るる初日かな   五百木瓢亭
初日影夜は明けていまだ富士見えず   藤野古白
東(ひんがし)に初日出でけり昇り行く   篠原温亭
初日さす朱雀通りの静さよ   河東碧梧桐
大濤にをどり現れ初日の出   高浜虚子
葉牡丹の霜紫に初日哉   大谷句仏
獅子舞の宿を出てゆく初日影   大谷句仏
去年の月残る高さや初日の出   大谷句仏
初日影我に伝へて五畝(せ)の宅   永田青嵐
郊外や初日のあたる風の藪   沼波瓊音
我が郷の富士といふ山初日かな   岡本癖三酔
手の平に初日の恵み満ち足りぬ   中野三允
金糸雀(カナリヤ)の箱にささやく初日かな   羅蘇山人
牛部屋の屋根に鶏鳴く初日かな   大谷繞石
大いなる初日据りぬのぼるなり   原石鼎
島々の昨日の雪や初日の出   赤木格堂
枯芭蕉八柱立てり初日さす   松本たかし

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