布団、蒲団(ふとん)、敷蒲団、掛蒲団、干布団

 ふとんの本来の漢字は「蒲団」。読みの蒲(ふ)も団(とん)も唐音(中国から渡来した漢字音)である。蒲(がま)の葉を編んで作った円い座ぶとんが、その語源だという。布団は当て字とされるが、「布」が常用漢字のためよく用いられるようになった。冬の季語となったのは、寒さしのぎに重要な役割を持つため。夏の場合は「夏蒲団」が季語になる。座布団は季語にならない。

被(かつ)ぎ伏す蒲団や寒き夜やすごき   松尾芭蕉
蒲団きて寝たる姿や東山   服部嵐雪
引ぱりて蒲団ぞ寒きわらひごゑ   広瀬惟然
毛蒲団やこわい夢見る後夜(ごや)の鐘   岩田涼菟
(注)毛蒲団は、毛皮や鳥の羽毛の蒲団。後夜は、夜間から朝にかけて。
足が出て夢も短かき蒲団かな   炭太祇
わびしさや旅寝の蒲団数をよむ   炭太祇
旅の身に添ふや敷き寝の馬ぶとん   炭太祇
嵐雪とふとん引合ふ侘寝かな   与謝蕪村
よき蒲団宗祇とめたるうれしさに   与謝蕪村
古郷にひと夜は更るふとん哉   与謝蕪村
都人にたらぬふとんや峰の寺   与謝蕪村
あたまからふとんかぶればなまこかな   与謝蕪村
孝行な子供等に蒲団ひとつづつ 与謝蕪村
いばりせし蒲団干したり須磨の里   与謝蕪村
波まくら小舟にうすき蒲団かな   高桑闌更
身に添はで憂しやふとんの隙間風   黒柳召波
足を折りて頭に余すふとんかな   吉分大魯
寝ながらに手して礼いふふとんかな   高井几董
(訳)人の家に泊って。様子を見にきた主人に、蒲団の中から片手拝みに礼を言う。
昼此(ごろ)に戻りてたたむふとん哉   小林一茶
今少し雁を聞くとてふとん哉   小林一茶
早立のかぶせてくれし蒲団かな   小林一茶
(訳)宿の相部屋で。早朝に発つ人が、まだ寝ている人に自分の蒲団を掛けていく。
小夜千鳥加茂川越える貸蒲団   上田秋成(無腸)
つめたかりし蒲団に死にもせざりけり   村上鬼城
詩腸枯れて病骨を護す蒲団かな   正岡子規
寒さうに母の寝たまふ蒲団かな   正岡子規
せぐくまる蒲団の中や夜もすがら   夏目漱石
(注)せぐくまるは「跼まる」。腰を曲げ身を縮めること。
我骨のゆるぶ音する布団かな   松瀬青々
蒲団かむりて起り来る事を恐れけり   高浜虚子
ぽつくりと蒲団に入りて寝たりけり   臼田亜浪
ひねもすや遠山かくす干蒲団   鈴木花簑
一ぱいに蒲団敷きけり庵の内   武定巨口
大岩に蒲団干したりでゆの谷   楠目橙黄子
(注)でゆは「出湯」(でゆ、いでゆ)温泉。
病人の著(着)たる蒲団の花鳥かな   川端茅舎

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