大根、大根焚、大根引く、大根漬ける

大根(だいこん、だいこ)、大根焚(だいこんたき)、大根引く、大根洗う、大根漬ける、大根掛ける

 大根はアブラナ科の根菜で、太くて長く真っ白な根部に特徴がある。消費量が多く、煮物、鍋物、漬物、大根おろしなど調理法が豊富で、日本では最も庶民的な野菜と言えよう。九月上旬に種を播き、年内に収穫するのが冬の季語の「大根」だが、春大根、夏大根もある。現在、最も好まれているのが「青首大根」で、全消費量の95パーセントを占めるという。

鞍壷に小坊主乗るや大根引   松尾芭蕉
(訳)親が大根を引く傍ら。男の子が馬の背(鞍壷)にちゃっかりと腰を掛けた。
御殿場に馬休めけり大根引   宝井其角
大根に実の入る旅の寒さかな   斯波園女
久々で野に出る馬や大根引   浪化
神送り荒れたる宵の土大根   浜田洒堂
(注)神送りは、陰暦十月、神々の出雲への旅立ちを送ること。その日の風もいう。
道ばたの天秤棒や大根引   炭太祇
十方に里の道あり大根引   中川乙由
人参に片荷は赤し大根引   横井也有
蕎麦切の日や一本の大根引   横井也有
(注)蕎麦切(現在の蕎麦)を食べる日。薬味用に大根を一本抜いてくる。
市で見る顔やきのふの大根引   横井也有
大根の肩抜け出して雨寒し   吉川五明
辛崎の松も見ゆるや大根ひき   夏目成美
大根ひきて松はひとりになりにけり   夏目成美
奥山にかかる日和や大根引   成田蒼虬
掘りたての大根ぬくし山のはた   成田蒼虬
大根引御城の見ゆる天気哉   成田蒼虬
大根引一本づつに雲を見る   小林一茶
大根引(き)大根で道を教へけり   小林一茶
(注)古川柳の「ひん抜いた大根で道を教えられ」は一茶の句より古いといわれる。
尼寺や二人かかつて大根引   小林一茶
ふんばりて引けば根浅き大根かな   夏目吟江
角力取宿もちけらし大根引   桜井梅室
(注)この場合の宿は、住居。
灯ともして大根洗ふ野川哉   福田把栗
住の江や松に掛けたる干大根   皿井旭川
畠より躍りあがりし大根馬   皿井旭川
鬣(たてがみ)を振ひやまずよ大根馬   高浜虚子
流れ行く大根の葉の早さかな   高浜虚子
畑々や掛大根の上の富士   鈴木花簑
西(にし)吹けば灰降る村や大根引   林蛙面坊
たらたらと日が真赤ぞよ大根引 川端茅舎
生馬(いきうま)の身を大根でうずめけり 川端茅舎
大根馬菩薩面して眼になみだ   川端茅舎
弦歌わく二階の欄も干大根   川端茅舎
畑大根皆肩出して月浴びぬ   川端茅舎
川口の芥に漕げり大根舟   鈴狂
大根馬悲しき前歯見せにけり   鈴狂

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