秋の七草の1つ。高さは約1メートル、山野に自生する多年草。分岐した小枝は逆三角形に広がり、その上に黄色の粟粒ほどの小花をたくさんつける。平安時代からよく和歌に詠まれ、俳句の作例も多かった。近年は自生地が減少、目にする機会が減り、作句も少なくなっているようだ。
見るに我も折れる斗(ばかり)ぞ女郎花 松尾芭蕉
ひよろひよろと猶(なお)露けしや女郎花 松尾芭蕉
米の無き時は瓢に女郎花 松尾芭蕉
雨風の中に立ちけり女郎花 小西来山
女郎花猿にも馴るる山路かな 小西来山
身の上をただ萎れけり女郎花 岩田涼菟
牛に乗る嫁御落すな女郎花 宝井其角
野にも寝よ宿刈萱(かるかや)に女郎花 各務支考
茎の色花の形見や女郎花 各務支考
女郎花野守が妻に睨まれん 横井也有
(注)女郎という名を茶化した戯れの句。
飢えてだに痩(や)せんとすらむ女郎花 炭太祇
(注)痩せようと無理なダイエットをする女性(特に女郎)が、江戸時代にもいた。
手折りてははなはだ長し女郎花 炭太祇
里人はさとも思はじ女郎花 与謝蕪村
猪の露折りかけてをみなへし 与謝蕪村
荒牧の中に痩せけり女郎花 大島蓼太
姥捨によろぼひ立てり女郎花 大島蓼太
(注)姥捨ては、疎外されて老後を送る所。よろぼひは「よろめく」
我ものに手折れば淋し女郎花 大島蓼太
雨の野や人もすさめぬ女郎花 高桑闌更
見るうちや風の吹折る女郎花 三浦樗良
川風の移りも行くか女郎花 加藤暁台
秋風を被(かつ)ぎてふせり女郎花 加藤暁台
女郎花危うき岸の額(ひたい)かな 加藤暁台
(注)額は突き出た所。
あるが中に野川流るる女郎花 加舎白雄
面影の幾日変らで女郎花 高井几董
生添ふや小松が中の女郎花 高井几董
秋風を待つとて立つや女郎花 夏目成美
反りかへるほど哀れなり女郎花 夏目成美
初めから吹折られけり女郎花 夏目成美
我(が)丈に余りて淋し女郎花 岩間乙二
女郎花都離れぬ名なりけり 井上士朗
こまごまと垣根結びて女郎花 建部巣兆
夕暮や見捨てて戻る女郎花 成田蒼虬
手折人に露をかけけり女郎花 成田蒼虬
井戸の名も野の名も知らず女郎花 成田蒼虬
さびしさや螽(いなご)の登るおみなへし 鈴木道彦
墓原や一人くねりの女郎花 小林一茶
女郎花あつけらこんと立てりけり 小林一茶
(注)あっけらこんは、あっけらかん。
蜘(くも)の囲の執着深し女郎花 桜井梅室
女郎花の中に休らふ峠かな 高浜虚子
夕冷えの切り石に置く女郎花 日野草城