桐一葉、一葉落つ、一葉

 桐一葉は、1枚の葉が落ちて秋になる(一年の終りが近づく)ことを表している。「淮南子(えなんじ)」など中国・漢代の書に書かれており、「桐一葉落ちて天下の秋を知る」などと言い慣わされてきた。季語の上では「一葉落つ」や「一葉」でも、「桐一葉」と同じ意味になる。桐一葉の桐は、中国では梧桐(ごどう=アオギリ)のことと言われるが、日本では梧桐、桐の双方とされている。

拾ひ来て見するきのふの一葉かな   伊藤信徳
我宿の淋しさ思へ桐一葉   松尾芭蕉
よるべをいつ一葉に虫の旅寝して   松尾芭蕉
一葉落ちいくらも落ちて月夜哉   服部嵐雪
石塔をなでては休む一葉かな   服部嵐雪
風待ちし昨日の桐の一葉哉   宝井其角
水の蜘(くも)一葉に近くおよぎ寄る   宝井其角
三葉散りてあとは枯木や桐の苗   野沢凡兆
日のうちは今日も暑うて一葉哉   立花牧童
船作る鑿(のみ)の谺(こだま)に一葉かな   桜井兀峰
影連れて一葉散りけり月の初   志太野坡
煙草より果敢(はか)なき桐の一葉哉   各務支考
三日月の射て落としたる一葉哉   横井也有
門番の直(すぐ)に掃たる一葉哉   横井也有
文月の返しに落ちる一葉かな   加賀千代女
つりがねの肩におもたき一葉かな   与謝蕪村
活(き)過ぎし脛(すね)を叩けば一葉哉   大島蓼太
絲(いと)きれて琴にも知るや桐の秋   大島蓼太
あけぼのの青き中より一葉かな   大島蓼太
在りし世のままや机にちる一葉   蝶夢
鐘の声鐘の声桐の一葉落つ   加舎白雄
一葉二葉後は桐とも言はぬなり   加舎白雄
音すなり筧(かけい)の口の桐一葉   加舎白雄
何と見む桐の一葉に蝉の殻   加舎白雄
蜘(くも)の糸ちぎれて桐の一葉かな   高井几董
庵の戸へ拾ひ入れたり桐一葉   井上士朗
落てから大きな桐の一葉かな   松村月渓
落て後風さわぐなり桐一葉   岩波午心
置床の団扇に並ぶ一葉かな   成田蒼虬
今朝ほどやこそりと落ちてある一葉   小林一茶
狗(いぬころ)が敷て寝まりし一葉哉   小林一茶
夕ぐれやひざをいだけば又一葉   小林一茶
もげやうを二階で見たる一葉哉   桜井梅室
大寺の屋根に落ちたる一葉哉   内藤鳴雪
桐一葉我がたましひに似てゆらぐ   岡野知十
つくねんと坐し居れば桐の一葉落つ   正岡子規
夏痩の骨にひびくや桐一葉   正岡子規
地を打つに革の音して桐一葉   松瀬青々
今朝見れば淋しかりし夜の一葉かな   藤野古白
桐一葉日当りながら落ちにけり   高浜虚子
わが足にからまる一葉大いなり   高浜虚子
朝の靴つややかに一葉踏みにけり   大谷碧雲居
手をのべて筧(かけい)の一葉落しけり   宮部寸七翁

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