日経俳句会第134回例会

日経俳句会は11月19日(水)午後6時半から、東京・内神田鎌倉橋交差点そばの日経広告研究所会議室で11月例会(通算134回)を開いた。行く秋も足早、冬の到来も気ぜわしい時候ながら20人が出席し、「短日(たんじつ)」「枯蓮(かれはす)」の兼題を巡っての投句総数は、投句参加者12人分を含め、156句と賑わった。選句7句での句会の結果、最高は星川佳子さんの「風土記よりつづく社や蓮の骨」の9点句。次席は大下綾子さんの「機嫌よき老親とゐる小春かな」の7点句。三席は嵐田双歩さんの「枯蓮の陽あたる方へ折れにけり」の6点句だった。

続く5点句は「短日の取り残されし洗ひ物 双歩」、「残りしは寄り添ふ二本枯はちす 大澤水牛」、「同じ場所探し物して日短 綾子」の3句。次いで4点句は8句、3点8句。以下2点29句、1点43句。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「短日」

短日の取り残されし洗ひ物     嵐田 双歩

同じ場所探しものして日短     大下 綾子

短日や知らず捗る庭仕事      井上庄一郎

短日の一日でありし憂国忌     今泉恂之介

短日やチャイムが急かす宅急便   岡田 臣弘

音もなく短日山になだれ落ち    直井  正

短日やなお黙々と農夫婦      植村 博明

乗り違え逆行く電車暮れ易し    徳永 正裕

短日や人恋しさに歌舞伎町     野田 冷峰

「枯蓮」

風土記よりつづく社や蓮の骨    星川 佳子

枯蓮の陽あたる方へ折れにけり   嵐田 双歩

残りしは寄り添ふ二本枯はちす   大澤 水牛

枯蓮の蝿ゆつくりと身繕ひ     金田 青水

枯蓮や髭剃つているホームレス   横井 定利

新聞にへばりつかれて蓮の骨    横井 定利

枯蓮に日差し豊かな日なりけり   今泉恂之介

枯蓮や昔のままの片笑窪      高石 昌魚

「雑詠」

機嫌よき老親とゐる小春かな    大下 綾子

巡礼の前へ後ろへ秋の蝶      大澤 水牛

木枯らしの淋しき方へ吹きにけり  嵐田 双歩

張替を終へし障子の小春かな    井上庄一郎

烏帽子岳眺めて冬の支度かな    堤 てる夫

 

参加者(出席)嵐田双歩、今泉恂之介、大倉悌志郎、大澤水牛、澤井二堂、杉山智宥、鈴木好夫、須藤光迷、高石昌魚、高瀬大虫、高橋ヲブラダ、堤てる夫、徳永正裕、直井正、野田冷峰、廣上正市、藤野十三妹、星川佳子、水口弥生、横井定利(投句参加)池村実千代、井上庄一郎、植村博明、大熊万歩、大沢反平、大下綾子、岡田臣弘、加藤明男、金田青水、久保田操、流合研士郎、藤村詠悟          (まとめ・堤てる夫)

 

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酔吟会第113回例会

11月8日(土)午後1時から千代田区内神田の日経広告研究所会議室で第113回酔吟会が開かれた。前日が立冬、時折雨の降るうすら寒い日だったが、出席16人、投句参加2人という盛況だった。

今回の兼題は「木枯」と「納豆」。投句五句、選句6句で句会を行った結果、最高点は5点で「納豆のおかめ印と古女房 恂之介」「ススキの穂つるりと撫でて奥秩父 佳子」の2句、次席4点は「木枯らしや列の乱れぬ通学路 百子」「納豆や糸引くごとき別れあり 冷峰」「凩のこけつまろびつ富士見坂 水馬」「木枯らしや犬もおしつこ端折りをり 臣弘」「納豆や主婦のカラオケ参加賞 春陽子」の5句だった。続く3点は6句、2点が9句、1点が30句も出た。兼題別の高得点句(3点以上)は次の通り。

「木枯」

木枯らしや列の乱れぬ通学路     高井 百子

凩のこけつまろびつ富士見坂     谷川 水馬

木枯らしや犬もおしつこ端折りをる  岡田 臣弘

木枯や長瀞の鵜の男前        大澤 水牛

「納豆」

納豆のおかめ印と古女房       今泉恂之介

納豆や糸引くごとき別れあり     野田 冷峰

納豆や主婦のカラオケ参加賞     玉田春陽子

納豆どすか居ておへんえと今日の宿  藤野十三妹

納豆よ八十路遠しと思ひしに     今泉恂之介

「雑詠」

ススキの穂つるりと撫でて奥秩父   星川 佳子

朴の葉の落ちて巡礼驚かす      大澤 水牛

赤き実の見え隠れして落葉掻き    高井 百子

草紅葉草木成仏至仏山        野田 冷峰

【参加者】(出席)今泉恂之介、大澤水牛、大沢反平、大平睦子、岡田臣弘、片野涸魚、久保田操、澤井二堂、高井百子、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、野田冷峰、藤村詠悟、星川佳子、(投句参加)金指正風、藤野十三妹。

(まとめ 大澤水牛)

 

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秩父長瀞合同吟行会を開催

番町喜楽会が日経俳句会に呼びかける形で11月3,4日、一泊二日で秩父長瀞吟行を実施した。日経俳句会からも3人が参加し、総勢14名でちらほら紅葉し始めた秩父の観音札所を巡り、長瀞川下りなど盛りだくさんのイベントをこなして佳句が量産された。

吟行句会は帰京後幹事に投句し、メール選句による恒例の方法で行われた。投句は3句以上5句以内、選句は5句で「天」(5点)、「地」(3点)、「人」(2点)、「入選」2句(1点)を選ぶ形式を採った。その結果、最高点は15点で、久保田操さんの「陽を残す秩父連山冬隣」と谷川水馬さんの「にこにこと志功の鬼や文化の日」の二句が並んだ。次いで「句案して秩父の酒と菜漬かな 大澤水牛」が12点、三席は8点で「狼の骨あたためむ銀杏散る 星川佳子」だった。その他の高点句および参加者各人の人気を呼んだ句は以下の通り。

鹿肉に秩父錦の新酒かな      井上 啓一

うつすらと粧ふ秩父山の国     大澤 水牛

とろろ蕎麦鹿を仕留めし話聴く   大下 綾子

冬うらら貨車も居座る秩父駅    岡田 臣弘

お遍路の衣に映る冬紅葉      久保田 操

銀杏散る日本武尊の越えし山    須藤 光迷

瀞澄むや水底の石に秋の雲     高瀬 大虫

一枚ガラスいつぱいに秋の景    田中 白山

冬晴れや白き前垂れ武甲山     谷川 水馬

きのこ売り放射線量検査済     玉田春陽子

結願の寺に一本冬桜        堤 てる夫

秋水を手もなく捌く川下り     徳永 正裕

山風に芒かしぐや奥秩父      星川 佳子

秩父路の札所巡りや暮の秋     前島 厳水

(まとめ 大澤水牛)

 

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番町喜楽会第110回例会

番町喜楽会は11月1日(土)午後6時から千代田区九段下の区立生涯学習館で第110回例会を開いた。兼題は「酉の市(とりのいち)」「鍋物(なべもの)一般」で、投句5句、選句6句で進めた結果、最高は5点で、須藤光迷さんの「夫婦には見えぬ二人や桜鍋」と、田中白山さんの「新旧の村人集ふ牡丹鍋」の2句。次席は4点で、嵐田双歩さんの「二人なら余る幸せつみれ鍋」、堤てる夫さんの「雑踏をこらへ切つたり大熊手」、山口斗詩子さんの「煮詰まりし白菜残る一人鍋」の3句。

続く3点句は、「牡蠣鍋や生二三個を分けておく 井上啓一」「口切りの話も出たり虎屋前 岩沢克恵」「箸先の右往左往や牡蠣の鍋 玉田春陽子」「夕紅葉石塔高き仏国寺 てる夫」「久々に腕をからめて三の酉 星川佳子」の計5句。

当日は会場変更・日程変更が重なって、事前に幹事宛てメール投句し、選句表が当日配布される番町喜楽会の通常方式が不可能になり、短冊に作品を書き込んで投句する伝統方式に則って句会を行った。しかし句会は円滑に進み、雨中の居酒屋に繰り出しての反省会まで滞りなく終えた。

なお日経俳句会の嵐田双歩さん(日経写真部OB)と、廣田嘉章さん(TDK元取締役)が入会、この日初参加され、投句・選句・講評に手慣れたところをみせてくれた。兼題別の高点句(3点以上)は次の通り。

「酉の市」

雑踏をこらへ切つたり大熊手       堤 てる夫

久々に腕をからめて三の酉        星川 佳子

「鍋物」

夫婦には見えぬ二人や桜鍋        須藤 光迷

新旧の村人集ふ牡丹鍋          田中 白山

二人なら余る幸せつみれ鍋        嵐田 双歩

煮詰まりし白菜残る一人鍋        山口斗詩子

牡蠣鍋や生二、三個を分けておく     井上 啓一

箸先の右往左往や牡蠣の鍋        玉田春陽子

「雑詠」

口切りの話も出たり虎屋前        岩沢 克恵

夕紅葉石塔高き仏国寺          堤 てる夫

参加者(出席)嵐田双歩、井上啓一、今泉恂之介、大澤水牛、須藤光迷、高井百子、高瀬大虫、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、野田冷峰、廣田嘉章、前島巌水、(投句参加)岩沢克恵、星川佳子、山口斗詩子   (まとめ・堤てる夫)

 

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第32回三四郎句会例会

三四郎句会の10月例会は16日(木)午後1時半から、東京・神田錦町の宗保第二ビル内で行われた。岡本崇、石黒賢一さんは欠席だったが、12人が出席。欠席投句・選句の岡本さんを加え、会員14人中13人の参加となった。

兼題は「天の川」と「糸瓜」(糸瓜忌も可)。「太陽を頬張り石榴裂けにけり」(岡本崇)と「故郷に少女老いゆく天の川」(今泉恂之介)が5点の最高点句で並んだ。4点は「海峡に下北浮かべ天の川」(河村有弘)と「しもた屋の軒に鮭吊る酒田かな」(今泉恂之介)の2句。3点には「ロッキーに汽笛染み入り天の川」(印南進)、「天の川ダムの放水滔々と」(深瀬久敬)、「岩風呂や赤子手伸ばす天の川」(竹居照芳)など5句が並んだ。

次回は12月18日(予定)。兼題は「冬温し」と「山眠る」に決まった。

参加者(出席)後藤尚弘、河村有弘、宇野木敦子、印南進、吉田正義、篠田義彦、今泉恂之介、深瀬久敬、竹居照芳、田村豊生、渡辺信、宇佐美論 (投句参加)岡本崇

(まとめ 今泉恂之介)

 

 

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日経俳句会第133回例会

日経俳句会の平成26年第9回例会(通算133回)は10月15日(水)午後6時半から鎌倉橋交差点傍の日経広告研究所会議室で開かれた。兼題は「行く秋(ゆくあき)」「小鳥来る(ことりくる)」で、投句総数は164句の大賑わい。7句選句の結果、最高は須藤光迷さんの7点句「行く秋や詩朗句集の深き味」。三回忌を経た山口詩朗さんの句文集「団居」が話題となったこの秋を題材にした佳句が圧倒的人気を集めた。次席6点句は嵐田双歩さんの「よその子の育つ早さや小鳥くる」と、廣上正市さんの「刃物研ぐ一滴二滴秋の水」と「草引けば穴の深きや秋暮るる」の計3句。三席5点はこれまた廣上さんの「百年の開校記念日小鳥来る」の1句だった。

続く4点句は9句で、池村実千代さん、大熊万歩さんの作品がそれぞれ2句づつ入った。3点は9句、以下2点27句、1点47句。なおこの日の句会から嵐田啓明さんが俳号「双歩(そうふ)」を名乗ることになった。

兼題別3点以上の高点句は次の通り。

「行く秋」

行く秋や詩朗句集の深き味       須藤 光迷

行く秋や名画座のある学生街      嵐田 双歩

行く秋を高尾の山に拾ひけり      直井  正

行く秋やオカリナの音低くして     野田 冷峰

行く秋や世辞言ひて食ふ五平餅     今泉恂之介

行く秋やLEDの光の樹          大澤 水牛

行く秋や手かざすほどの日の光     鈴木 好夫

行く秋やだらだらと飲む金曜日     村田 佳代

「小鳥来る」

よその子の育つ早さや小鳥くる     嵐田 双歩

百年の開校記念日小鳥来る       廣上 正市

小鳥くる淡きときめき文化祭        池村実千代

静寂といふ音のあり小鳥くる      池村実千代

小鳥来るひとり暮らしのニュータウン  植村 博明

箒目の気ままな庭や小鳥来る      大熊 万歩

小鳥来て奏楽堂に朝の歌        澤井 二堂

「雑詠」

 刃物研ぐ一滴二滴秋の水        廣上 正市

草引けば穴の深きや秋暮るる      廣上 正市

鈴虫を飼う主逝きて甕ばかり      大熊 万歩

語らずに歩む無月の池の端       大倉悌志郎

 葭の原鬼の野分が飛んで行く      大沢 反平
 根津の杜足袋の白さや華(はな)神輿      澤井 二堂

流鏑馬の的は舞いたり薄紅葉      須藤 光迷

稲架(はざ)掛けのひと息入れる団居かな    堤 てる夫

 

参加者(出席)嵐田双歩、池村実千代、井上庄一郎、今泉恂之介、大熊万歩、大澤水牛、大下綾子、岡田臣弘、澤井二堂、杉山智宥、鈴木好夫、須藤光迷、高瀬大虫、高橋ヲブラダ、堤てる夫、直井正、廣上正市、藤村詠悟、星川佳子、水口弥生(投句参加)植村博明、大石柏人、大倉悌志郎、大沢反平、加藤明男、金田青水、久保田操、高石昌魚、徳永正裕、野田冷峰、流合研士郎、藤野十三妹、村田佳代、横井定利             (まとめ・堤てる夫)

 

 

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番町喜楽会西新井大師吟行

番町喜楽会は10月4日(土)の第109回例会を西新井大師(五智山總持寺)への吟行句会とした。たまたまこの日、西新井大師で年に一度の「北斎会(ほくさいえ)」が行われ、寺宝である葛飾北斎の肉筆画『弘法大師修法図』が展観されることが分かったため、会議室での例会を急遽吟行会に切り替えた。大師修法図は美濃紙三十六枚を継いだ大画面に二日月の暗夜の巌上に修業する大師とそれに襲いかかる巨大な鬼を描いた作品。北斎晩年を代表する肉筆画で、寺宝として大切に扱われて来たためか絵の具の状態も良く、なかなかの迫力ある名画で、参加者一同「来た甲斐があった」と満足そうだった。

句会は足立区立鹿浜学習センターで開催した。会場が和室で茶会が出来るよう水屋のある準備室が備わっていたので、星川佳子さんのお点前によるお薄が出席者に振る舞われた。茶を喫した後、いよいよ句会。既に例会用の兼題「秋冷」「とろろ汁」が出されていたためそれを生かし、吟行の嘱目3句と兼題句2句を投句する形(投句参加者は兼題句、雑詠含め3句)で行った。

7句選句の結果、最高点句は6点で今泉而雲さんの「眉月も妖しや大師修法図」と星川佳子さんの「お茶たてて俳句の会や秋晴るる」の2句。続く5点は堤てる夫さんの「秋の風祈祷の太鼓堂に満つ」の1句、三席4点は投句参加山口斗詩子さんの「子等の手がすり鉢おさへとろろ汁」だった。以下3点4句、2点11句、1点26句という結果になった。3点獲得以上の句は以下の通り。

「秋冷」

朝冷えや切り絵のやうな烏帽子岳   堤 てる夫

秋冷や休耕田の深轍         玉田春陽子

「とろろ汁」

子等の手がすり鉢おさへとろろ汁   山口斗詩子

ぐぁぐぁととろろ擂る母日曜日    高井 百子

とろろ吸ふ脇本陣の黒き梁      徳永 正裕

「吟行句」

眉月も妖しや大師修法図       今泉 而雲

お茶たてて俳句の会や秋晴るる    星川 佳子

秋の風祈祷の太鼓堂に満つ      堤 てる夫

《参加者》(出席)井上啓一、今泉而雲、大澤水牛、須藤光迷、高井百子、高瀬大虫、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、野田冷峰、星川佳子、前島厳水、(投句参加)岩沢克恵、田中白山、徳永正裕、山口斗詩子。(まとめ 大澤水牛)

 

 

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第132回日経俳句会

日経俳句会は9月17日(水)午後6時半から東京内神田鎌倉橋交差点そばの日経広告研究所会議室で例会(通算第132回)を開催した。

つい先頃まで暑い暑いとぼやいていたのが嘘のような秋冷の候となり、句会出席者20人、投句参加者12人、投句総数153句と相変わらずの盛況ぶりを見せた。この日の兼題は「墓参」と「鮭」。投句は3句以上5句以内、選句7句として句会を行った。選句結果は最高点が9点で、「もう少し生きてみますと墓参 悌志郎」の1句。次席は7点で「肩の荷を下ろして帰る墓参かな 庄一郎」「墓洗ふ終に養子にならぬまま 恂之介」「日を跳ねて波跳ね上げて鮭のぼる 綾子」の3句、三席は5点で「墓洗ふ家系に一人残されて 反平」「掃苔や素直になりて父に逢ふ 靑水」の2句だった。以下、4点が4句、3点10句、2点26句、1点44句という結果になった。兼題別高得点句(3点以上)は次の通り。

「墓参」

もう少し生きてみますと墓参     大倉悌志郎

肩の荷を下ろして帰る墓参かな    井上庄一郎

墓洗ふ終に養子にならぬまま     今泉恂之介

墓洗ふ家系に一人残されて      大沢 反平

掃苔や素直になりて父に逢ふ     金田 青水

墓参り想ひは父の肩車        髙石 昌魚

戻る家なき生国の墓洗ふ       廣上 正市

ローカル線棚田にぐるり墓地ありて  岡田 臣弘

墓参り隣は子連れ若夫婦       流合研士郎

「鮭」

日を跳ねて波跳ね上げて鮭のぼる   大下 綾子

海の色川の色変へ鮭の群れ      大倉悌志郎

アイヌ語の地名懐かし鮭のぼる    嵐田 啓明

鬼の目を盗んで蹴るや鮭の缶     植村 博明

初鮭や鳥獣川に宴を張る       大熊 万歩

初鮭に生醤油少し老夫婦       徳永 正裕

また落ちてまた跳ね上がる鮭の群れ  星川 佳子

「当季雑詠」

銀輪の縦の一列秋の雲        廣上 正市

石段のひびに一列にらの花      大澤 水牛

虫の音を聞きつつ寝入る浄土かな   須藤 光迷

近隣の婆さま集ふバーの秋      堤 てる夫

 

 

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酔吟会第112回例会

日経俳句会酔吟会は9月13日(土)午後1時から内神田・鎌倉橋交差点そばの日経広告研究所会議室で平成26年度第5回例会(通算112回)を開いた。秋らしい爽やかに晴れた一日で、出席15人、投句参加4人という近来にない大盛況の句会となった。これは番町喜楽会のメンバーである高井百子、玉田春陽子、谷川水馬の3氏が参加(水馬氏は投句)したため。これによって会員減で先細りの印象があった酔吟会が力強く蘇った。

この日の兼題は「秋の声」と「新蕎麦」。句会はいつものように短冊に自作を書いて幹事に提出し、全投句短冊を混ぜてから出席者に均等になるように振り分け、各人が淸記用紙に書き写したものを順繰りに回覧して選句、披講、合評会に移るという伝統的な方式によって粛々と進んだ。

投句5句、選句7句で句会を行った結果、最高点は7点で今泉恂之介さんの「寝返りの背に新涼の来たりけり」。次席は5点で金指正風さんの「新蕎麦や小さん師匠の箸遣ひ」、三席は3点で「小上りに古希ことほぐや走り蕎麦 春陽子」「新蕎麦や旧街道はよく晴れて 反平」「海鼠壁くづれし宿場秋の声 水牛」「走り蕎麦一茶の在所はとの曇り 正裕」「新蕎麦を打つや店継ぐ次男坊 恂之介」「満月や冥土へ続く道明かり 百子」「ハゼ釣りの竿が縁取る東京湾 涸魚」「シャッターの銀天街や秋の声 二堂」「落日の尾瀬かがやけり草紅葉 冷峰」の9句がひしめき合った。以下、2点が15句、1点が33句だった。

《参加者》(出席)今泉恂之介、大澤水牛、大沢反平、大平睦子、岡田臣弘、片野涸魚、久保田操、澤井二堂、高井百子、玉田春陽子、堤てる夫、徳永正裕、野田冷峰、藤村詠悟、星川佳子、(投句参加)大石柏人、金指正風、谷川水馬、藤野十三妹。

(記録 大澤水牛)

 

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姨捨山田毎の月吟行を開催

日経俳句会と番町喜楽会は9月7、8両日、「おばすて観月祭」開催中の長野県千曲市の「姨捨の棚田」を訪れ、観月吟行会を催した。参加したのは大澤幹事長以下、両会の有志13人、雨模様の予報をものともせず、長野新幹線を長野駅で乗り換えてJR篠ノ井線姨捨駅に昼過ぎ集合した。一行の気合いが天に通じたのか二日間とも好天、特に満月を翌日に控えた7日夜は鮮やかな「十四夜月」に恵まれた。

夜の観月ツアーのあとはホテルに戻り、連句の会。日中の棚田散策、松尾芭蕉の面影塚のある長楽寺見学など句材たくさんの一日を思い出しながらの一夜となった。翌8日は善光寺参詣に向かう人、姨捨一帯の名所、武水別神社などを巡る人などそれぞれの日程をこなして帰途についた。

吟行句会は恒例のメール句会とし、投句3句、選句4句(天5点、地3点、人2点、入選1点)で得点を集計した。その結果、最高は今泉恂之介さんの「更科に晴れ女来て今日の月」が20点、次席は堤てる夫さんの「善光寺平瞬き涼新た」が16点、三席は玉田春陽子さんの「待宵や駅に味噌屋の小商い」が14点。田中白山さんの「棚田へは行きも帰りも萩の道」が11点、澤井二堂さんの「小さき田の案山子も眺む姨の月」が10点、高瀬大虫さんの「棄つらるる齢越え来て良夜かな」が9点と続いた。

参加者は、嵐田啓明、今泉恂之介、井上庄一郎、大澤水牛、岡田臣弘、澤井二堂、高井百子、高瀬大虫、田中白山、谷川水馬、玉田春陽子、堤てる夫、野田冷峰。

参加者の代表句は以下の通り。

月待つや棚田の中のさざれ石     嵐田 啓明

名月や鎮む棚田に里光る       井上庄一郎

老僧の芭蕉と座する月見堂      今泉恂之介

あきらめてをりしが棚田を照らす月  大澤 水牛

名月に味噌せんべいの味も添へ    岡田 臣弘

姨捨のスーパームーンや母の影    澤井 二堂

千曲川見下ろす案山子踊りをり    高井 百子

姨捨や案山子田毎に月迎へ      高瀬 大虫

小望月闇のくの字の千曲川      田中 白山

名月や棚田の水の音高く       谷川 水馬

秋の蝶黃金の波の十里ほど      玉田春陽子

姨捨や観月列車二胡の弦       堤 てる夫

夜明け前編まれし里の月今宵     野田 冷峰

(報告 堤てる夫)

 

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